夫婦一方の預貯金が尽きた後、一方のみが施設入所と同時に保護申請(生活保護法第4条1項及び2項適用)

夫婦一方の預貯金が尽きた後、一方のみが施設入所と同時に保護申請をしました。保護受給は可能でしょうか?結論から申し上げますと、保護申請は却下されます。なぜなら、夫婦の扶養義務は保護に優先して行われ(保護の補足性)、施設入所しても別世帯ではなく同一世帯として扱われるためです。民法で夫婦間の協力扶助義務が規定されています。夫婦は互いに協力し扶助しなければなりません。もう一方の預貯金で一方の施設費用をまかない、夫婦ともに預貯金が尽きた後、保護受給が可能です。(K市及びF市ともに確認をしましたが、結論は同様でした)。ちなみに夫婦であっても夫が妻以外の者と同棲し、妻と別居している期間が相当長期にわたっている場合等夫婦関係の解体が明白である場合、別世帯として判断されます。その場合、別世帯として保護受給が可能です。

生活保護法
(保護の補足性)
第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

民法
(同居、協力及び扶助の義務)
第752条
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

生活保護問答集
(問1-4)〔入院期間が長期にわたる場合〕
「病院等に入院している場合」は入院期間が長期に及んでも別世帯として認定する必要はないか。
〔参照〕局第1-2-(5)
(答)病院その他特定の目的のために入院・入所する施設は、救護施設、母子生活支援施設のように生活維持を目的として入所する施設を除き、その場所は居住地として認定されない。したがって、その期間の長短のみをもって世帯認定を変更すべきではない。
例えば、長期入院の間に出身世帯そのものが消滅する場合残存世帯員が一人でその者が死亡したような場合、夫婦間に離婚手続がとられ、かつ、それが擬装でないことが明らかな場合等)は、入院患者が単身世帯を営むこととなり世帯の認定を変更すべきであろう。この場合、通常、保護の実施責任も、出身世帯の所在地(居住地保護)から、病院所在地(現在地保護)に変わることになる。
また、出身世帯がある場合にも、入院患者又は出身世帯員を世帯分離する取扱いが認められることがある。

夫婦の扶養義務は保護に優先して行われ、施設入所しても別世帯ではなく同一世帯として扱われます。

2025年10月18日