成年被後見人の生存中に同人の兄弟姉妹等の戸籍謄本等について

成年後見業務の中で戸籍謄本等の交付請求をすることがあります。

①成年被後見人等の推定相続人を把握する必要がある場合②成年被後見人等の医療行為のため親族の同意を必要する場合です。

①は「戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合」には該当しないため、交付請求をすることができません。②は直系の親族がいないこと、兄弟姉妹等の傍系有無についても確認する必要がある場合、交付請求をすることができます

【私の事例】
本人の子が既にご逝去されており孫の消息が不明でした。医療同意を必要とするため交付請求したところ、約2ヶ月後に孫の居所が判明しました。早速、筆を執り医療同意をお願いしたところ、快諾していただくことができました。その後、何十年ぶりに交流が再開して本人も大喜びです。

戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合には戸籍謄本等の交付請求ができます

戸籍法
第十条の二 前条第一項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合 戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
三 前二号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由

平成28年8月4日付け法務省民事局民事第一課前野補佐官発の事務連絡
「成年後見人から、成年被後見人の生存中に,同人の兄弟姉妹等の戸籍謄本等について戸籍法第10条の2第1項第3号に基づく交付請求があった場合,当該請求理由が後見終了後の事務を円滑に行うためにあらかじめ同人の推定相続人を把握する必要があるといったものであるときは、一般的には同号に規定する「戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合」には該当しないことから、請求に応じることはできない
 ただし、当該請求理由が、成年被後見人への医療行為のため同人の親族の同意が必要となる場合であって、直系の親族はいないことの確認に加え、兄弟姉妹等の傍系の有無についても確認する必要がある場合等,当該請求に現在において戸籍情報を確認すべき必要性が認められるときは,正当な理由があるとして当該請求に応じることができる

2025年06月17日